№11 「コロッケ町のぼく」

1973年(昭和48年)2月3日~3月31日 毎土曜日18時05分~18時35分

原作:筒井敬介「コロッケ町のぼく」

脚本:筒井 敬介(1話~6話)、須藤 出穂(7話~9話)
演出:黛 叶、伊東美行、花房 實、佐藤和哉」、大久保晋作

出演:
栗田久文:土田一郎
中山昭二:父・広助
夏川かおる:母・キヨ子
西牧光一:弟・次郎
玉川砂記子:金尾加奈子
近石真介:父・正直
花形恵子:母・とみ子
武智豊子:祖母・スミ
広中朝明:ダイちゃん
有馬義人:マルオカくん
河村真紀:ズンコ
吉岡いずみ:ユキコ
津野哲朗:菊池先生
神保共子:飯田先生
天草四郎:つるかめ不動産主人
前沢迪雄(みちお):さいたま屋主人
村瀬正彦:栄湯のおやじ


全9回(サブタイトルなし)

第1回
ここは東京の下町荒川べり。一郎と加奈子は小学4年生。お隣通しの仲良しだ。町の名物「さいたま屋」のコロッケをかじっていると、栄湯のダイちゃんがやってくる。3人とも親に「勉強しろ」と言われて少し気持ちが沈んでいる。大人のいないどこかへ行きたいと話し合う3人だった。家に帰った加奈子は家が所有するアパート「ことぶき荘」が、建て替え前で空き家になることを聞きつける。加奈子はさっそく一計を案じて、仲間を集める。そこをみんなの秘密の隠れ家にしようというのだ。親たちを納得させるために、架空の家庭教師が面倒を見てくれるという話をでっちあげる。こうして子供同士だけの夢の城を確保した一郎たちだが、親たちは家庭教師の先生にお礼をするといって、持ちまわりで夕食を届けにきてしまう。困った一郎たちは菊池先生に事の次第を正直に話す。驚いたことに菊池先生はその架空の家庭教師の身代わりをしてくれるというのだ。「ことぶき荘」で子供たちは自由に過ごし、菊池先生は親たちの差し入れを食べて帰る。不思議な共犯関係の毎日だが、ある日、菊池先生が親たちに真相を語る日がきた。

第2回
菊池先生の説得で「ことぶき荘」はあらたに焼鳥屋の娘ヨウ子さんを指導役に存続が決まった。ある日、親たちが町内温泉旅行に出かけることになり、一郎や加奈子は留守番だ。一郎が家業の「安心食堂」を開けたところ、怪しいお客に手提げ金庫のお金をすられてしまう。一郎たちは独自で捜査を始める。警察からも犯人の似顔絵を頼まれるが、一郎たちの描く犯人の絵はマンガもどきで使いものにならない。みんなは荒川で絵の練習を始める。

第3回
加奈子の祖母スミが「ことぶき荘」の電気代がかかると文句をつける。一郎たちは電気代を捻出しようと知恵をしぼる。弟の次郎が荒川で小魚を釣ってきたことに触発され、ドジョウの釣り堀商売を画策しはじめる。お金儲けにはしる一郎たちを心配した菊池先生は、一芝居をうつ。変装した先生は子供たちをアルバイト話で連れ出して、誘拐されたと思い込ませる。しかし一郎たちは怖がるどころか呑気なものだ。スミも菊池先生も形無しとなる。

第4回
菊池先生の変装に感じ入った一郎たちは、お芝居をやろうと思い立つ。菊池先生もしぶしぶ指導役に引っぱり出される。3匹の子ブタを上演することは決まり、配役をくじ引きで決める。ところが加奈子の親をはじめ、自分の子供たちの配役が似合わないと反対する。ヨウ子さん機転で自由な役作りを試すことにする。やがて筋書きは子ブタとオオカミの言い争いに変わってしまい、収拾がつかない。菊池先生もつい巻き込まれてしまうのだった。

第5回
新学期。新担任の飯田先生はお嬢様育ちで下町の子供には少々物足りない。一郎は先生の薦めで、堤防決壊を身を挺して救ったハンス少年の本を読む。自分もまた町の危機には力を尽くすと、加奈子と密かに誓う。その加奈子は山の手の学校に転向してしまう。ある日強い地震が起きる。一郎は堤防を救おうと、帰省中の加奈子や飯田先生と土嚢作りに汗を流す。幸い町は無事で、コロッケの「さいたま屋」の前でひと息つく一郎たちだった。

第6回
加奈子は再び町に帰ってきた。しかし一郎たちの態度はよそよそしい。加奈子の父に「ことぶき荘」からの立ち退きを宣告されていたのだ。一郎たちは立て籠もる覚悟だ。悲しむ加奈子。だが飯田先生が存続できるよう直談判をしてくれた。加奈子はみんなを誘い先生の実家をピクニック気分で訪ねる。だが訪れた山の手上流家庭の雰囲気に驚く。一郎たちは先生が下町になじめず辞めるという噂に心配するが先生はきっぱり否定してくれる。

第7回
飯田先生が下町に引っ越してくるという。菊池先生はお嬢様育ちの判断だと反対し、口論になってしまう。口げんかも仲の良い内という一郎の両親の言葉に一郎と加奈子はなんとなく得心するのだった。だがアパート探しは難航する。スミは先生の部屋を見つけられないのは町の恥だとして乗り出してくる。妙な成り行きに子供たちも浮き足立ってしまうのだ。やがてスミの決断で「ことぶき荘」に入居が決まる。部屋の掃除を手伝う一郎たちだった。

第8回
飯田先生の町での生活が始まった。女の子たちは特に大喜びだ。ある日先生の母親チヨが娘を心配して町を訪れる。スミがボウリングに誘ったり、一郎の両親が柳川鍋をふるまうなどの気づかいに、チヨの気持ちはほぐれていく。すっかり落ち着いたチヨは一泊していくことになった。その夜、アパートの階段に泥酔した男がいたため、驚いてしまう。だが、一郎たちが工夫した緊急警報装置で全員集合。菊池先生もかけつけて事なきを得る。

第9回
大人たちが高速道路建設計画の噂話をしている。町は立ち退きを認める移転派と先祖代々の町を守ろうという反対派に別れた。子供たちも先行きが心配でならない。スミは「ことぶき荘」に若い学生らを突然入居させる。周囲が立ち退き料つり上げ工作だと邪推するなか、一郎や加奈子たちは堂々と移転反対を宣言する。だがスミの行動も、実は一人でも反対派の同士を増やす心づもりであったのだ。そして大人たちの心も決まっていくのだった。

(増山 久明「NHK少年ドラマシリーズのすべて」アスキーより)

第5回で一郎が影響を受けたハンス少年の話は、オランダ系アメリカ人メアリー・メイプス・ドッジが1865年に発表した「銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語」に出てくるエピソード。実話ではない。

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